汝の名は汝

銃を捨てろ!俺はパリピだ!

ナンパにまんまと釣られてみた①

私が人生で初めてナンパされた場所は渋谷だった。

 

基本的にはナンパなんて、いちいち記憶に残るようなもんじゃない。繁華街でのナンパはゲリラ的で数打ちゃ当たるスタンスのものが大半だし、声をかけられるたびにやたら落ち込むから。*1でも初めてのナンパだけは鮮明に思い出せる。

 

私は高校時代、ひどく自意識をこじらせていた。この行動をしたらどう思われるだろうか?えーい、どう思われたっていい!いやしかしそれってどう思われたっていいと思っていると思われたい自分じゃ?みたいな自意識無限ループにハマってしまって抜け出せなくなっていた。

私と同じく「こじらせ系」だった友達が、雨宮まみさんの『女子をこじらせて』を紹介してくれた。私はそれを頭がもげるくらい頷きながら読んだ。雨宮まみさんが世に出てきてくれたことをとてつもなくありがたく感じた。

 

そんな風に過ごしていた時期に、渋谷でナンパされた。

 

初めてのナンパに驚いたが、それよりも「うわ!私と真逆の人間だ!!」という衝撃の方が強かった。自意識でがんじがらめになっていた私は、ナンパという自意識から解放された行為に対峙したことで、多くの疑問と深い興味を抱いた。自意識からの解放は、そのときの私が最も成し遂げたいと思っていたことだった。

どうやったら自意識から自由になれるのかが知りたい!

自分と真逆の人間であるナンパ男は、一体どんな精神構造をしているのか?

そもそもナンパって、ついて行った場合最終的にどうなるの?

ナンパ師の生態を観察すれば、私の生きづらさに関するヒントを得られるのではないか?

 

結局そのとき声をかけてきた人とはLINEだけ交換して、そのまま帰宅した。交換したはいいものの、初対面同士ゆえ特に会話も続かず、LINEから何か学べるようなこともなく、彼のアカウントは気がついたら消滅していた。

 

初ナンパを経てから、ナンパする人間のメンタルへの興味はどんどん強くなっていった。

軽蔑を土台にした興味ではなくて、本当に心から知りたかったのだ。私もあいつらみたいにイージーモードで生きたい!!あいつらみたいな人生が欲しい!!と激しく思っていた。

 

その後ナンパされたときに気が向いた場合は、実地調査を敢行した。しかしすべて食事や飲みで切り上げた。性的な領域にまでは踏み込まず、「カラオケ行こうか?」みたいな性の匂いがプンプンするセリフの舞いを見届けたところで即帰宅。匂いを嗅ぎつけるだけで満足だった。私が抱いていた、ナンパについて行ったらどうなるのかという問いへの答えが見えてきたから。(答えといったってこんなの正答率99.9%の問題だけど…)人それぞれアプローチの仕方や方向性に違いがあったものの、だいたい「ワンチャンヤれればOK」という感じ。

 

話は変わるが、私はアイドルが大好きだ。ある日、推しのライブを見に行くために渋谷のライブハウスへ向かった。チケットはクレカで事前に買ってあったので、もう入場するだけ〜♪

 

 

…と思い込んでいた。

会場についてみると、受付で「チケット代○○円です」と言われた。そのライブは当日払いだったのだ。すっかり油断していた私は現金を持ってきていなかったため、結局ライブを見ることはできなかった。ドアの隙間から漏れる推しの歌声…ショックのあまり彼女たちの曲を歌いながらセンター街を歩いていた。そしたら、ナンパされた。

 

(は?センター街を歌いながら歩いているヤバいやつをナンパ?こいつヤバいな?てか何でこんな冴えないアラサー独身男っぽさ全開なの?チャラチャラしてないとこがますますヤバいな? こんな容姿のやつもナンパとかするんだ〜へ〜ウケる〜〜) というのが第一印象。

ライブを見られなかった私はかなり不機嫌だったから、実地調査なんかどうでもよくなっていて、とにかくそのナンパ野郎をさっさと撒いて帰ろうとした。しかしながら、彼は史上最強にしつこかった。あまりのしつこさに面倒くさくなった私は、連絡先だけ投げつけて黙らせ、サササーっと帰った。

 

その日のうちにLINEが来て、改めて予定を決めて会うことになった。特に理由があったわけではないが、今回はいくとこまでいってやろうという気持ちでいた。性的な領域の先には何が待っているのかを確かめてやりたかった。

 

会った日の内容は食事をしてラブホに行くという決まりきったパターンで、詳しく書くほどでもない。ただ非常に興味深いと感じたのは。彼はストリートナンパを生業とする人間だという話だった。そもそもストリートナンパが一つの分野として確立している事実を初めて知った。ナンパは個人単位で行わず、チームとして情報共有がなされていること。ナンパをする際の方法論が決まった型としてあること。(声のかけ方、連れ出しの誘いテク等) 

 

ナンパする側の視点からの景色を初めて見た。

 

まるで自分の中に新しいプログラムがインストールされたような気分だった。ずっと事象(ナンパそのもの)から眺めていた物事を、枠組み(ナンパ理論)から眺めるという体験は、ヘレンケラーがw-a-t-e-rという語彙を理解した瞬間と似ているかもしれない。(?)

 

彼はこれまで千人単位の女性をナンパしてきたらしく、ナンパの指導を請われることも少なくないそうだ。LINEに登録された友達の人数も1000人近かった。業者かよ?というレベルだが、1000という数字は紛れもなく彼が足で稼いできた成果なのだ。膨大な数の人間とコミュニケーションを取ってきたという経験は、私からすれば想像もつかないものだ。違う世界を生きてきた人の話を聞くのは驚きと感心の連続で、とても刺激的だった。

 

多種多様な人々と接してきた彼だが、私は今まで出会った中で一番面白いと言われた。そりゃ調査目的でナンパについていくような女子なんて中々いないもんな!

そしてこのナンパは、「ワンチャン」で終わらなかった…

 

*1:個人的に声をかけやすい=なめられていると解釈しているため